隣に座っていいですか?
隣に座っていいですか?
そんな彼の発言を受けると
何だか
流れが速い。
次の日
正式に彼は我が家にやってきて
『娘さんを下さい』
と、頭を下げる。
感動と言うより
『今さらかいっ!』
と、突っ込みですわ。
婚姻届やらいろんな手続き
まぁ
家が隣なので
引っ越しも楽だろう。
「式はどーすんの?」
土曜の午後
ソバを食べながら達也が言う
「私は別に……いいんだけど」
遠慮もあった。
彼は初婚じゃないし
きっと
彼の亡くなった奥様のご両親も、嫌な気持ちになったら申し訳ないし。
挙式の件は
半分あきらめていたけど
彼は私に言ってくれた。
『小さくてもいいから挙式はしましょう』
へタレな彼に似合わず
堂々と私に言い切る。
亡くなった奥さんとは
挙式はしなかったらしい。
お金もないし
家族の反対もあって
駆け落ち同然だったので
奥さんも『しなくていいよ』と、言ってくれたから、それをそのまま甘えて受け止めいたら……そんな結果になってしまい。
彼は後悔したそうだ。
「郁美さんにドレスを着せて、ご両親にも見て欲しい」
だから
本当に小さな挙式をホテルで行って、そのまま小さな会場を借りて軽くお祝いしましょうという話になった。