隣に座っていいですか?


どこへ行こうか

別に予定もなく
ふらふらと大型書店へ行く。

桜ちゃんの大好きな絵本
忍者シリーズが並んでいた。

新刊出てる。

買ってあげたい。

でも
誕生日プレゼントに欲しいような話をしてたから、グッとこらえよう。

可愛い娘は
リアクションも大きくて
素直に喜んでくれるから
何でもしてあげたくなる。

親バカな私。

大きくなったら
忍者か
そば屋か
きゃりーぱみゅぱみゅになりたいそうだ。

頑張ってくれ
可能性を伸ばしたい。

少し歩くと
今日の昼
彼とランチを共にしていた
イケメン作家のコーナーがあった。

沢山並んでる中
一番好きだった本を手にする。

泣いたな……この作品。

「趣味悪いですね」

耳元で聞き覚えのある声。

「彼女ひとり?」
彼がスーツ姿で私をナンパ。

「主人がいますの」
ツンとして答える。

「少しならいいでしょう」

「娘もいますわ」

「お若いのに」

他人行儀な会話に思わず笑う。

「相川さんは?」

「さっき別れたとこ」

会いたかったな。

「ひとり?」

「うん。桜ちゃんは友達と遊びに行った。誰も遊んでくれないからひとり」

「ごめんなさい」

優しく微笑むから
ドキリとして目線を外し本に移す。
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