隣に座っていいですか?
「そんな純愛死にオチネタが好きなんですか?」
めっちゃ嫌な顔。
友達の本なのに。

「えーっ流行ったし泣けたよ」

主人公が恋人と実は兄妹だったけど、誤解とわかり喜んでいたら彼女が不治の病に倒れ、それが奇跡的に回復し、退院の日に迎えに行こうとした彼は、子供をかばって事故に合い亡くなってしまう。

ええ話や。
思い出しても泣ける。

「ありえなすぎて、逆に面白い話でしたが……」

「自分が楽しければそれでいいんです」

言い切ると納得された。

「私だって紀之さんの読む本はわからないもん」

「……なるほど」

もっと納得している。

彼が読む哲学の本なんて
私が開くと一瞬で眠れる。

「それ買うんですか?」

「ううん。持ってる」

当然って感じで返事をすると、ちょっと引きつった顔になったけど、またいつもの優しい顔になり

「じゃぁ、せっかく会えたんだからデートしましょう」

「いいの?」

「もちろん。桜が帰って来る前に家に戻ればいいのでまだ時間はある」

「嬉しい」

本を置き
そっと彼の腕に手を添える

ふたりでお出かけ。

恋人同士に戻ったみたい

いや
恋人同士の期間って
あったっけ?私達。

まぁいいや。
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