隣に座っていいですか?
放って帰ろうとしていると

「お父さんだいじょうぶ?」
心配そうに傍による桜ちゃん。

この子がいるから
私も非情になれません。

「大丈夫だよ」
桜ちゃんの頭を撫でて『痛っ!』と言いながら座り直す。

「あしたのえんそくのおべんとうは作れますか?」
心配そうに正座し
桜ちゃんは必死に言う。

遠足?
お弁当?

「うん。作れると……思うよ」
ちょっと間が空いたのが心配なのか、桜ちゃんは唇を噛み思いつめたように田辺さんを見上げる。

「あしがいたかったらいいよ。さくらはおにぎりが作れるから、ひとりでおにぎり作るよ」
ぷっくりとした桜色した小さな唇が、一生懸命頑張って言う。

「大丈夫だよ。桜の為に作るから。ネットで調べたキャラ弁作るよ頑張って作るから……でも……」

でも?
でも……で
なぜ私を見つめる。

「足が痛いから、ちょっとだけ手伝ってもらえたら、きっと素敵なお弁当が作れると思うんだ」

嫌な予感がする。

「いくちゃん」

「はいっ!」
桜ちゃんに呼ばれ大きく返事。

「おとうさんをたすけてもらえますか?」

サラサラした髪の毛が私の前で下がり、私は『ダメ』とは言えなくなってしまった。

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