隣に座っていいですか?


次の朝 6時という
少し早目の時間に田辺家を訪問。

「いくちゃん!」
早起き桜ちゃん。
遠足リュックを背中に、もう起きてます。

「おはよう桜ちゃん」

頭を撫でてから台所へと進むと、難しい顔で田辺さんは海苔をハサミで切っていた。

「あーー!また失敗だ!」

やっぱり叫んでる。

「おはようございます」
冷たい声を出し隣に並ぶと

「郁美さんおはよう。この海苔って意外と強敵だって知ってた?」
目が充血している。
どんだけ早起きした?

プリントアウトした完成図。
うずらの卵にゴマの目を付け、海苔で口を貼る。同じく小さなおにぎりにもそれをして、クマのキャラなので耳を付けてチーズで貼る。

人参を茹でて星形に切らねば。
いや、先にこのタコさんウィンナーをやっつけてゴマの目を付けた方が効率がいいかな……などと真剣に見ていると

「郁美さんカワイイ」
とんでもない事を言われて、息が止まりそうになる。

「なっ何です急に?」
心臓に悪い。
ドキドキが止まらない。

「いや……真剣な横顔見てたら桜みたいで、可愛いなぁって思っただけです。すいません」
さりげなく言われて
私がタコさんウィンナーになる。

「からかわないで下さい。急がないと間に合いませんよ」

ドキドキを追い出そう。
その優しい顔を追い出そう。

もう

ダメだ私。

ちょっと変だ!
< 57 / 307 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop