隣に座っていいですか?
「本当にありがとうございました。郁美さんのおかげで桜も大喜びです。ありがとうございます」

「桜ちゃんが喜んでくれてよかったです」

あの可愛い顔で喜ばれると、作ってよかったって本気で思う。

「僕ひとりじゃ無理でした」

「ケガしてましたものね」
段ボールの山を見て
思い出したように私は言う。

今から思うと
どうして
足のネンザでお弁当作りを、手伝わなければいけなかったのだろう。

手じゃないから
別に関係なかったかも。

「足は治りましたか?」
多少の嫌味を込め聞くと

「大丈夫です。骨折じゃなかったみたいです」
真剣に答えてるし

あたりまえだろ。
誰が見てもわかるわ。

「田辺さん」

「はい」

「荷物片付けましょう」

返事がない。

しばらくの沈黙の後
遠くを眺める。

「僕って……片付けられない男なんですよね」

30男が言っても可愛くないわー。

「田辺さんがケガしても別にいいんですけど、こんなにあちこちに荷物があると、桜ちゃんがケガするでしょう」

娘の名前を出されると
身体がビクリと動き出し

「努力します」
小さく呟く。

よしよし。
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