隣に座っていいですか?
不安そうな顔が出てしまったのか、田辺さんは私の顔を見て表情を和らげる。

「それで、こんな夜中に非常識なんですが、申し訳ありません。氷を少しいただけますか?」

「氷ですか?」

「はい」

私は転ばないように店の冷蔵庫と自宅の冷蔵庫から氷を取り出し、大きめのジップロック3つに入れ、ついでに手つかずのポカリスエットも添えて田辺さんに渡す。

「ありがとうございます」
嬉しそうに礼を言い
店を出ようとしたので

「ちょっと待って下さい」
呼び止める

「はい?」

「私も行きます。3分待って下さい」
着替えてダッシュしようと思っていると

「郁美さんはダメです」

はっきり言われた。

顔を見ると
それは真剣で
いつものへタレ顔ではない。
男らしく真面目にきっぱり
端整な顔で私を拒否している。

ダメです……って。

「心配だから行きます」

「ダメです。気持ちだけありがとう」

優しく微笑み

田辺さんは

行ってしまった。
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