先生と教官室3~沢山の初めて~
「伊緒……。」
少し怖い目をした先生が、私の頬へと手を伸ばす。
今、この手に捕まってしまったら私はどうなるのだろう。
怒るのかな、嬉しいのかな、それとも悲しくなる?
解らない。
初めてのことで知らないことが多いからか、自分の気持ちがどうなってしまうのか全然解らない。
あぁ、でも……でも……。
「先生。」
「ん?」
私の声に、伸びてきていた先生の手がピタリと止まる。
「今日の晩御飯は、先生の大好きなオムライスです。」
「え?」
「デザートには志帆さんから頂いたアップルパイがあります。」
「お、おぉ…。」
「お風呂には、この前先生が好きだと言っていた入浴剤が入っています。」
「…あぁ、ありがとう。」
でもね、ぐちゃぐちゃになる気持ちの中で、一つだけハッキリしていることがある。
「ご飯も、お風呂も、全部全部終わったら…最後に、先生のことが好きな私を貰ってくれますか?」
どれだけ自分の気持ちがぐちゃぐちゃになってしまったとしても、先生が喜んでくれる姿を見る時の気持ちは、絶対に幸せなものなんだ…。