先生と教官室3~沢山の初めて~
カチ…カチ…と、時計の音が二人の空間に響き渡る。
そして、その音に同調するように自分の鼓動が速くなっていく。
この静かな時間、嫌だな…言ってしまったことを強く後悔してしまう。
緊張する、恥ずかしい、怖い。
もういっそこの空間から逃げてしまいたくなる。
「伊緒。」
「………はい。」
固まっていた空間が、先生の低い声によって崩されていく。
怖くて見られないけど、先生今どんな顔をしているのかな…。
「やべぇ、泣きそう。」
「…………え?」
え、ちょ、今、なんと?
泣きそう?先生が?
「え、先生何言って…。」
「いや、俺も自分で自分が良く解らん。でも、何だろうな凄く嬉しい気持ちなんだ。伊緒に色々してもらって俺は幸せ者だなぁって思ってたら、いつの間にか泣きそうになってた。」
「え…。」
「ははは、感極まって泣くとか俺も相当老けたなぁ。」
そう言って笑う先生の目には、確かに少しだけ涙が浮かんでいた。
嬉しいって、幸せだって、私の行動や言葉でそんな風に先生は思ってくれるんだね。
「せんせっ……。」
「うわっ」
床に座る先生の上に飛びつくように、思いっきり先生の胸へと飛び込んだ。