先生と教官室3~沢山の初めて~
飛び込んだ先生の胸からは、私と同じくらい速い鼓動の音が聞こえる。
体温もいつもより高い気がする。
先生も私と同じように恥ずかしかったり緊張しているのかな。
「先生、もっと泣いてもいいんですよ?」
「あ?泣かねぇよ。男はそんなに簡単に泣いたりしないんですー。」
「何ですかそれ、さっきまでの可愛い先生はどこにいったんですか。」
「可愛いってなんだ、可愛いって。」
「そのままの意味です。涙目になってて、それはもう可愛かったですよ?ふふっ」
「よし、伊緒、覚悟しろ。歯くいしばれ。」
「え、きゃ、あはははははっちょ、こしょぐるの、反則…あははっっ」
さっきまでのぐちゃぐちゃした気持ちが、今では嘘のように消えてしまった。
先生と一緒に居られることがただただ嬉しくて、楽しい。
さっきの私の『お誘い』は先生にどう捉えられたか解らないけど、きっと気持ちは伝わってる。
先生は私のエスパーだもん、そうでしょ?
「せんせ…このままだとスーツ皺になりますよ?」
「あぁーそうだな。…それに、忘れてたけど腹も減ったし…ご飯食べようか。」
「ふふっ、そうですね。今準備するんで着替えてきて下さい。」
「あぁ。」
ひとしきり私をこしょぐって満足したのか、先生は素直に寝室へと着替えに向かう。
よし、私もご飯温めなおそうかな。
「あ、伊緒。」
「はい。」
「ただいま。…さっき、言い忘れてたからな。」
「……はい。お帰りなさい、先生。」