先生と教官室3~沢山の初めて~
「あんまり俺をからかうと、ただじゃ済まないぞ。」
私に一杯食わされたことが気に入らないのか、先生は不敵な笑みを浮かべながら顔を接近させてくる。
あらら、さっきまで照れて可愛かったのに。
反撃がとてつもなく速いな。
「なぁ、聞いてる?何も言わないなら続けるけど。」
そう言って私の後頭部を引き寄せ、先生はキスをしようと顔を更に近づける。
「先生。」
でも、その寸前で私はあえて口を開く。
今日は先生の好きにさせてあげない。
さっきも拗ねようと思ったのにすっかりほだされてしまったし、もう少しこの優勢を楽しんでやる。
「なんだよ。」
何とも絶妙なタイミングで口を開いた私を少し睨みながら、先生も口を開く。
「私、この後直ぐに家に帰らなきゃいけないんです。」
「え……でも、確か明日仕事休みだったろ?まだそんなに急いで帰らなくても…。」
「はい、仕事は休みです。でも、最近父から帰りが遅いとか泊りが多いと注意されましてですね。なので、今日は早く帰ろうと思います。」
「っっそ、それは、早く帰った方がいいな…。」
会話から出た『父』というワードに、明らかに顔色が変わる先生。
さっきまで威勢よく近づけてきた顔は元の位置へと戻り、表情はどこか固くなっている。
「ふ…ふふふ……」