今宵、きみを想う
 「別に、何もっ」


 
 あなたのことを考えてました、なんて恥ずかしくて言えないから目を逸らす。


 だけど、それはまた彼を勘違いへの階段へと誘う―――



 「言えないようなこと、俺の横で考えてたの?」

 「違っ!」

 「もっと、俺で埋めなきゃダメなのかな。お前のこと」


 左手が伸びてきて頬をなぞって、クシャリと耳横の髪を握る。


 「抱くよ」


 左耳にそう囁かれて、声だけでゾクリと身体が震える。


 もう、声だけで高ぶってしまいそうな体を隠したくて


 「ダメ、待ってっ」


 思わず止めに入ってしまうのに


 「待てない。全部、俺のモノになるまで。何度でもお前を抱くから」

 「んやっ、あぁぁああっ!!」



 彼の熱で、私の体は貫かれた。



 *
< 23 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop