今宵、きみを想う
 缶を包むその指があまりにも男を感じさせるから、急激に恥ずかしくなって俯いた。


 ドキドキが、止まらなくなってた。


 これは、酔いのせい?



 「なぁ……なんか、言いたいことあるだろ?」



 ドキドキに戸惑う私に突然彼から質問された。


 その至極、上からな物言いにちょっぴり反感を覚えながらも



 「な、なんかって何!?」

 「んー? なんでも」

 「はぁ!? そ、そんなの何にも……」

 「嘘、つくなよ。俺、伊達にお前の友達やってないんだけど?」

 「う……っ」



 たくさんの時間を彼と友達として過ごしてきた。


 彼を見てきた。


 だから、彼だって私を見てきたには違いない。


 でも―――



 だからって、こんな距離感、私は……知らない。



 「言えよ。言いたいこと全部。聞いてやるから」

 

 ぽんと、俯く私の頭に彼の手の平が乗る。


 さっき感じたばかりの……節のある男の手が私の頭に優しく触れた。
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