今宵、きみを想う
 その温かさが、大きさが。


 私に安心感と安らぎと、さらなるドキドキをもたらせて。


 そして、こみ上げてきた想いがとめられなくなって―――


 それが涙になって流れた。



 「反則っ! そんなの、ヒック、反則でしょ!?」

 「そーか?」

 「反則じゃない!! だ、大体、ヒクッ、なんで、今日……来たのよっ!!」



 叫びながら、ボロボロ泣きながら私は顔を上げて、彼を睨んだ。



 「お前が、泣くと思ったから」

 「ふざけないでっ!」

 

 そう言うと彼は、私の後頭部に手を回してグイッと私を引き寄せて、唇が触れそうな距離で怒鳴った。



 「ふざけるかよ!! 俺は、ずっとお前を見てきて、お前を想ってきたんだから。ふざけるわけねぇだろ今さら!」



 突然引き寄せられた体も、近づいた距離も。

 
 叫ぶように伝えられたその言葉も。


 その全てに驚きが隠せなくて―――


 何よりも、今まで見たこともないほどに雄々しい彼に戸惑って。




 私の涙は最後の一筋を流して止まった。


 だって
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