今宵、きみを想う
 初めて、私の名前を呼び捨てにした人だった。




 出会ったのは、学校の食堂にある自動販売機の前。



 10円足りなくて困っていた私に、10円を貸してくれた。



 一緒にジュースを買って、たわいもない会話を始めた。



 そんな、どこにでも転がってるような陳腐な出会いだった。


 

 入学して2日目で、クラスの子もまともに知らなかった私。


 その日の他愛無い会話で、キミが同じクラスだと知った。



 
 翌日から



 「オハヨ」



 と当たり前みたいに声を掛けてくれたキミ。



 ドキドキした。



 高校で初めて出来た男友達という存在に。


 軽く交わされる挨拶に。



 「お、はよっ」



 恥ずかしながらも返事をする私


 キミは衒いなくニッと笑顔を返してくれた。



 それだけで―――



 多分、それだけで私はキミに恋をした。
< 3 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop