今宵、きみを想う
 切なく、呟くように彼が漏らした言葉が私の胸を貫いて、ゆっくりと口から言葉を紡いだ。



 「だって、アンタずっと、彼女……いたでしょ?」

 「居たから何?」

 「私なんて、友達の一人じゃなかったの?」

 「お前が! いつまでたっても俺を見ないからだろ? ……妬いてくれないかって、馬鹿なことした。でもお前には伝わんなかったけど、な」


 
 自嘲気味にそう呟きながらも、私からは目を逸らさない。



 眼鏡越しの、彼の強い瞳から逃げられなくて、戸惑う気持ちが私の瞳を揺らす。



 ふっと息を漏らして、彼は続けた。



 「聞いたんだろ? あいつのこと」

 「ど、して……」

 「今日の幹事、俺のダチ。知ってたよ、アイツのことも」

 「じゃあ、教えてくれたら……っ!!」

 「言えるかよ! お前が、お前が3年想ってたやつが。大好きだった奴が、結婚したなんて、俺がお前に言えるわけないだろ!?」



 はっきりと、さっき聞いたばかりの事実を、他人の口から告げられて、私は『あぁ、本当なんだ……』って、また胸が苦しくなった。
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