今宵、きみを想う
 *

 「今日だっけ、同窓会」


 妻がそう尋ねる声に、後ろめたさなんて微塵もないはずなのに言葉に詰まった。


 「……あぁ、そう、だけど」


 いつもよりどこか歯切れの悪い俺の返答に、敏感に感づいた彼女が少しばかり拗ねた表情で近づいてきた。


 「何よ」

 「え?」

 「やましいことでもあるの?」

 「いや、ないけど」

 「ふぅーん」


 女性の嗅覚は鋭いというけど、まさにこういう時だよな……と思って苦笑した。


 「何も、ないから」

  「本当に?」

  「本当に本気で。神に誓って」


 わざとらしく宣誓ポーズをとってそう言ったけど、彼女の顔はまだ曇ったままだ。


 ―――そんなカオ、しなくてもいいのに。


 大事な彼女を凹ませてしまった事に参った……と思いつつ、そっと肩を引き寄せて抱きしめた。
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