今宵、きみを想う
 高校に入学して初めて話しかけた女の子だった。


 ドキドキしながら声をかけて、足りないという10円を代わりに投入した。


 振り返って見た君の笑顔があまりに綺麗で、とても印象的だった。


 翌日、教室で友達と喋ってたら君が来て平然を装って「おはよ」って言った。


 まるであたり前みたいに声をかけたから、馴れ馴れし過ぎたかなって思った瞬間……前の日と同じ笑顔を浮かべて「おはよう」って返してくれた。




 それだけで。


 それだけで、高校生の単純な俺は好きだって思った。



 毎日交わす挨拶と何気ない会話。


 少しづつそれらが降り積もって、それを大事に温めながら、いつか―――


 なんて、そんな日を夢見ていた。
 
< 35 / 96 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop