今宵、きみを想う
 いつか、そうなったらいいな……と思いながら見つめ続けていたら、嫌でも気づくことがある。


 君を想う目だ。


 その目にすぐ気が付いた。


 君はまるで気にした様子はないのかもしれないが、彼はとても好感のもてる男だった。


 嫌な奴ならいいのに、健気に君を想う気持ちが伝わってくる。


 それがあまりにも綺麗でまっすぐすぎて。


 単純に簡単に君を好きになった自分の気持ちは薄いのかもしれない、なんてことまで思い始めた。


 いや、違うんだ。


 ただ逃げたんだ。


 君に選んでもらうなんて、俺には無理なんじゃないだろうかって。


 彼ほどの人が傍にいるキミが、俺を想ってくれるなんてありえないんじゃないだろうかって。
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