今宵、きみを想う
 ――――――


 「あー!! ちょ、ねぇねぇ! 結婚したの!?」



 突然声を張り上げたのは、クラス一番目立つギャル系だった女の子。


 相変わらず派手で目立つ感じに苦笑した。


 君とは全く違うその風貌は今でも健在だ。

 

 「え、マジ!? お前そうなの!?」


 
 その彼女のノリにかぶさるように、君の隣にいた奴が身を乗り出して俺の薬指を凝視してきた。


 輝くシルバーの輪。


 薬指の根元で輝くそれは、触れられたくないとどこかで思っていた反面、わざとつけてきたものだ。


 外そうか……と一瞬思ってしまったけれど、妻に誓って妙なことはしたくないとあえて嵌めてきた。



 「結婚、したんだ……」



 目の前に当たり前のように座った君。


 それだけでもドキドキしていたのに、君の漏らした言葉でドクドクと妙に心臓が脈打つのが分かった。


 それに反して少しだけ悲しくなる心。

 
 けど、それはほんの少しで。


 光る薬指を見て、ふっと笑った。


 家で待つ、彼女のことが思いだされたからだ。


 それに気が付いてやっと分かった。


 もう、目の前に座る君は―――好きな人じゃなくて、好きだった人、で。

 完全に自分の中で消化できたことに。
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