今宵、きみを想う
 本音を言えば、ちょっとショックだ。


 好きだった彼が、カッコ良かった彼がフリーだとは思ってなかったし、付き合ってほしいなんて願望があったわけでもない。


 でも、結婚となるとやはりショックだった。


 「幸せ、なんだね」


 僻みっぽい言い方だなって思いながら、ついついそんな風に漏らしてしまった。


 それを聞いて苦笑しつつも彼は


 「うん」


 やっぱり優しい笑顔で、遠くに行ってしまった気がした。


 「多分、お前のお陰でもあるよ。ありがとう」


 ―――え?



 遠くに行ってしまった気がして、俯いてカフェオレを啜る私に彼がそう声を掛けてくれたから勢いよく顔を上げた。




 「あの時、ごめんな。本当は俺、お前のこと好きだった」


 
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