今宵、きみを想う
 ―――結婚したの?



 その問いかけに対する答えを聞いて、ピリピリッと神経が張りつめた。


 体が衝撃に耐えきれなくて、ジンジンする。



 ―――あぁ。って、言った。こないだって言った。



 さっき、思ったじゃない。


 結婚が視野に入る、年齢になったって……


 分かってた。


 そんなことも起こりうるんだってことは。


 でも、だからって。



 ―――彼がそうじゃなくたって、いいじゃないか。




 心が小さな悲鳴を上げる。


 ただの空想だ。


 つまらない、一人で思い描いた空想。



 実は今彼がフリーで。


 あわよくば、私と―――



 なんて。


 単なる絵空事。



 だからそんな深い期待なんて、してなかった。



 でも、結婚なんて。



 全く付け入る隙も、まして―――告白の一つも出来る隙間も。



 全くない。
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