今宵、きみを想う
  ――――――



 訳も分からずに連れてこられた公園で、不可解なことを言う彼。


 ただ、その瞳はまっすぐで。



 あぁ……彼のこの瞳は、昔からまっすぐだった、私にはって思い出した。




 「ちびで、運動できなくて。苛められた俺」

 「え……?」



 突然始まった彼の話に、戸惑いながら意識を戻した。



 「お前が小3の時に転校してきて。大声でさ、言うんだ『凄いね! 100点なんて!』って」

 「そんなこと、言った?」

 「あぁ……その一言で、みんなが俺を見る目が変わった」

 「そうだっけ?」

 「お前はいつも言うんだ。綺麗に掃除して偉いねって。字が上手だねって。褒めるのすごく」

 「そう、かなぁ?」

 「そうだよ」


 

 ぐっとまた引き寄せられて、額がこつんとくっついた。


 さらなる至近距離に、ドキドキと妙に心臓が踊りだす。



 そう言えば、こんな距離に男の人と居るの久しぶりかもって、体がそわそわした。
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