今宵、きみを想う
 「偶然家が近くて親同士にも割と交流が出来たせいか、俺もお前と余計に仲良くなって。それで……お前を知るうちにいつの間にか惹かれてた」

 「―――ッ!?」



 惹かれてた、なんて言われてさらに心臓が跳ねる。


 彼にこんなことを言われる日が来るなんて、思ってもみなかった。

 

 だから、だからそれだけ―――多分。



 「だんだんお前と居るのが恥ずかしくなって、中学に上がって離れた。そしたらどんどん遠くなって。高校に行ったらまた近づこうって思ったのに。お前馬鹿みたいにアイツばっかり追いかけてた」

 「……」



 言葉に、ならなかった。



 彼を追いかけていた自分を、見てくれていた人がいたことを。



 私一人が、一人で恋をしていたんじゃなかったことが、なんだか切なくて苦しいのに。



 嬉しかった。



 一人じゃなかったんだって。



 とても酷いかもしれないけれど、私はそんな風に思ってしまった。



 「なんども気のあるそぶりをみせてもお前は無関心」

 「そ、んなこと、あった?」

 「あったよ」

 「嘘っ!?」

 「嘘じゃないし」


 フッと笑って、私の額に彼の額をぐりぐりと押し付けてくる。
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