今宵、きみを想う
 ――――――


 「最後まで優しすぎたよね、キミって」



 そう言って彼女はカラリと笑ってカフェオレをコクリと飲んだ。


 10年前にはなかった女っぽさを纏った笑い。


 その表情に彼女は彼女の10年があったんだな……と感じた。


 「優しくは、ないよ。優柔不断で、自分のことしか考えてなかっただけだよ」


 彼女が俺の何をやさしいと思っているかはわからないけれど―――


 俺はただ、自分にすらハッキリと答えを出せなかった臆病者だ。


 だから


 「だって、キスしてくれなかったじゃない」


 彼女は笑うけど……
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