今宵、きみを想う
 「根性がなかっただけだよ」


 俺はまた苦笑いを浮かべた。


 「本当はしたかったけどね」


 冗談めかしてニッと笑いながら言うと


 「ハハッ。本当? 私、女に見えてた?」

 「当たり前。俺、いっぱいやっかまれたんだから」


 わざとらしく肩をすくめてそう言うと


 「もー、嘘ばっかり」


 と言いながら、彼女は昔と変わらない笑顔を浮かべた。


 本当に。


 君はずっと可愛らしい女の子だったよ―――
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