今宵、きみを想う
 「ねえ」


 自分の世界にトリップしていた俺に、彼女の声で現実に戻る。


 「うん?」

 「あのさ」

 「うん」

 「私もっ」

 「え?」

 「私も、好きだった。ずっと―――」

 「え?」


 彼女からの告白返しに、目を丸くした。


 まさか彼女からその言葉を聞く日が来るとは思っていなかった。


 「だから……本当は、最初からずっと好きだったのっ!」


 恥ずかしさからか、やけくそ気味にそういう彼女。


 その様子が昔と同じでくすくすと笑ってしまった。


 「ひどっ! 笑うとか、酷過ぎ!」

 「ご、ごめっ。くくっ。つい」

 「もー。酷い奴ぅ」


 そう言って彼女が唇を尖らせる。


 そんな仕草も、昔と変わってない。
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