今宵、きみを想う
 昔と―――そうやって比べられるほど、俺は彼女の隣に居たんだなって思った。


 それがまた懐かしさと同時に、少しだけ愛しさを取り戻した。


 もちろんそこに、恋愛の要素はもうないけれど……



 「ありがとう」

 「え?」

 「ヘタレだった俺なんかを好きだったと言ってくれて」

 「えー、ヘタレだった?」

 「うん、ヘタレだったよ。好きな人に好きだと言えず、キスしてと言われても出来ないヘタレ」


 そう言ってペロッと舌を出すと、笑われた。


 「もうっ、それ言わないでよ! 恥ずかしかったんだからぁ!!」

 「いやいや、一生忘れられないって」

 「もー! 酷い!!」

 「お前そればっかじゃん」

 「あ、それ言う!?」


 目を合わせてケラケラと笑いあう。

 
 良かった、きみとこんな時間がまた迎えられて。


 本当に、良かった―――
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