今宵、きみを想う
 背もたれに手を乗せて、彼女の耳元に唇を寄せる。


 眠る彼女に届くのかな―――


 なんて思いながら



 「愛してるよ」



 と囁いた。


 心なしか、彼女の頬が緩んだ気がするのは気のせいだろうか?


 勝手に嬉しくなった俺は、そのまま彼女の頤に手を掛けてそっと上を向かせる。


 こっくりこっくりと夢の中を彷徨う彼女を無視して



 「キス、していい?」



 返事もないのを百も承知で尋ねて―――返事のないきみの唇にキスをした。


 俺はきっと、この先もずっと。


 ずっとずっと、この唇にキスをする……



 *
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