今宵、きみを想う
 *


 突然、眼前に翳された小さな輪に、声を失った。


 まさか彼がそんなものを出してくるなんて思わなかったから。


 息を飲んで、目を見開いたまま固まる私に彼は囁く。


 そんな彼に私は―――



 「ばかっ」



 素直に喜べずに、悪態をつく。


 つきながら無理矢理嵌めて、彼の方をクルリと向いた。



 「だから、もっとカッコよくやりなさいよ」



 笑って言いたかったのに……


 言った瞬間、涙が零れた。


 
 「大きすぎるから」
 
 「ごめん」



 サプライズすらまともにしてくれない彼が、やっぱり愛しくて―――


 シーツが肌蹴て落ちてしまうのも構わず彼に抱き着いた。
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