プラスチック


「硝子みたいに繊細じゃないって言いたいわけ? あのさ、確かにプラスチックは丈夫だよ。けどさ、プラスチックだって傷はつくんだよ。硝子よりも簡単に傷つくんだよ」

硝子よりも、傷つきやすい……。
そんな風に考えたことなかった。

俯き、涙を堪える私に、今度は優しい声が降りかかる。

「人にばっか、気遣ってんなよ。辛かったら辛いって言えばいいんだよ。泣きたかったら、泣いたっていいんだよ。我慢なんてすることないじゃん」

項垂れた私の頭に、大きくてあったかい手がふわりと置かれる。

途端に漏れだす嗚咽。

ずっと、ずっと我慢してきたものが零れだす。
作り出した自分自身を保つために、張り詰めていた糸がプツリと切れる。


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