プラスチック


「百合。宿題してきた?」

いつものように、隣の席の恵子が訊いて来る。
そして、私もいつものように応える。

「うん」

わかってるくせに。そんな風に思いながらも言ったりはしない。

「ねぇ、ねぇ。見せてくれる?」

恵子は、顔の前で両手を合わせてお願いのポーズをする。
木村君と一緒で、こんな風にすれば見せてもらえると思い込んでいる。

また?

不機嫌な感情が湧き上がって来る。

それでもやっぱり口には出来ない。
だって、私はいつも笑顔じゃないといけないらしいから。

「いいよ」

私は、貼り付けたような笑顔でノートを渡す。


< 3 / 19 >

この作品のキーワード

この作品をシェア

pagetop