プラスチック
「百合。宿題してきた?」
いつものように、隣の席の恵子が訊いて来る。
そして、私もいつものように応える。
「うん」
わかってるくせに。そんな風に思いながらも言ったりはしない。
「ねぇ、ねぇ。見せてくれる?」
恵子は、顔の前で両手を合わせてお願いのポーズをする。
木村君と一緒で、こんな風にすれば見せてもらえると思い込んでいる。
また?
不機嫌な感情が湧き上がって来る。
それでもやっぱり口には出来ない。
だって、私はいつも笑顔じゃないといけないらしいから。
「いいよ」
私は、貼り付けたような笑顔でノートを渡す。