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「ほんとにちょっと暑い……どうなってるんですか」
ざく、と足元の地面をブーツに踏みつけながら、茅野は言う。
湖上にいる時からなんとなくじわじわと気温が上がっていくのを感じてはいたが、上陸するとそれは顕著だった。
茅野の世界で、夏になると天気予報でよく登場した「夏日」という言葉、あれが聞こえた日の真っ昼間によく似ている。
(たしか、あれは……二十五度以上)
本物の熱帯はこんなものではないのだろうし、これよりもっとうざったい猛暑だって経験したことはある。
だが、長袖のツナギにブーツにニット帽という格好では、暑苦しいのも当然だろう。
襟と帽子を捲って首元に風を入れる。
おまけに足元は、膝まである藪や苔の上を這う蔓、木の根っこだ。
歩きづらいことこのうえない。
茅野がばさばさと草を掻き分けたりしている横で、ラビはボートを岸に繋いでいた。
落ち着きのない茅野の方は見ずに、トーンの低い声を上げる。