Z 0 0 Ⅱ

呆れたように言う茅野に、ラビは不思議そうな顔をした。
そして続ける。


「基本的に目は合わすなよ、攻撃してくるのもいるから。サングラスかけておくか?」
「こ、攻撃……」


ラビの言うことは大人しく聞いておくが吉と判断した茅野は、彼の差し出したサングラスを受け取った。

レンズには薄く色づいているが、かけてみると、視界は裸眼の時と変わりない。
飼育員やガーデンを訪れた客も利用するものなのだろう。
内側から見ると透明になるように加工されているのだ。

レンズ越しの視界の中で、ラビも眼鏡を外して同じサングラスをかけるのを見て、茅野は首を傾げた。


「ラビさん、眼鏡じゃなくても大丈夫なんですか?」
「え?」


茅野をちらりと見たラビは、「ああ……」と声を出してから、手にした眼鏡を茅野に渡した。
レンズを覗き込んでも、視界は滲みもぶれもしない。


「伊達だよ、別に目が悪いわけじゃない」
「あ、そうなんですか」


実のところ茅野も、もしかしたらそうなのでは、と思っていた。
あれだけ毎日様々な眼鏡をかけているのだ。
全てを同じように度入りで作るのは大変だろう。


「サングラスなラビさんって新鮮……」


そこではたと、今さっきのラビの行動に気付いた。
眼鏡をサングラスにかけ変えていたのだ。
つまり、普段は何があっても派手な眼鏡をかけたままのラビが、一度は眼鏡を外して、裸眼を晒していたはずだった。

そのことに思い至って、「あー……」と声を上げた。


「茅野? どうした」
「いや……なんかすごく貴重なものを見逃した気がします」
「うん?」

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