Z 0 0 Ⅱ
「あ……ネコ?」
ラビの後ろにぴたりとくっついて歩いていた茅野が、ふと声を上げた。
ラビが視線で振り返る。
「あれ? ネコ、教えてあったっけ」
「え? いえ、私が知ってるネコと似てます」
「へえ……ネコはどこにでもいるけど、警戒心が強くてなかなか近寄ってこないんだ」
「あ、そこもおんなじ」
幹の黒っぽい木の根本、青々と繁る薮の中に、三角耳の小さな生き物が丸まっていたのだ。
くつろいだ様子で前足を丹念に舐める姿は、茅野のよく知る愛玩動物にそっくりだった。
こちらを全く気にしていないように見えるが、大きな耳は、こちらに注意が向いていることを示している。
へえそう、と呟いて、ゆっくりと頷くラビの後ろ姿を見上げる。
その時、キャスケット帽の後頭部越しに、黒い影が視界を過った。
またネコだろうか、それとも危ない生き物か、と身構える。
だがそれっきり、影の見えた方で何かが動くことも、ラビがそこを指差して「見てみろ」ということもなかった。
茅野の気のせいだったのだろうか。