Z 0 0 Ⅱ
しかし、首を傾げていると、ラビが振り返って「見てみろ」と言った。
茅野が注意を引かれた方ではなく、太い蔓の絡み付いた木の上だ。
小さな葉が密に生い茂っているためにこんもりと丸いシルエットになり、枝がどうなっているのかすら全くわからない。
あれでは、葉の奥に何がいたとしても見えないだろう。
だがラビの指は、そこを指差していた。
「あの葉の奥、見えるか。蔓が輪を作ってるところ」
「あの、小さい花の咲いた蔓ですか?」
「そうそう、あの奥で光ってる」
光ってる、という言葉に反応してしまって、ラビが苦笑いを浮かべる。
散々脅してきたのはラビさんのくせに、という抗議は喉の奥に押し込んで、茅野は目を凝らした。
光るということは、目なのだろうか。
はじめは気付かなかった。
というのも、それほど大きく太くもない木のあんな枝の上にいる生き物なのだからと、ここから見えるか見えないかというほどの大きさを想定していたからだ。
重なりあった葉の向こうから、なんとか日光が射し込んできているのだと、そう思っていた。
それにしてはオレンジがかっている。
丸い二つの輪郭。
それが、唐突に、ぐりんと彼方を向いた。
「!?」
思わずラビの焦げ茶の袖を掴む。
ラビは動いた巨大なぎょろ目にも腕にしがみついた茅野にも全く動じないまま、言った。