Z 0 0 Ⅱ

「樹のゾーンの向こうってこんなふうになってたんですね……」


二人がクルマを降りたのは、湖のほとりだった。
対岸に森が見える。
それほど大きな湖でもないのだろうが、茅野にとっては、これほどなにもない空というのは見たことのないものだった。
空を見上げて、水面を見渡して、口が開きっぱなしになっていたことに気付いてさりげなく閉じる。
ラビの方をちらりとうかがうと、こちらには背を向けていた。
ボートの準備をしていたようだ。
ほっとして、また湖面へ視線を戻す。


「島で二番目に広い場所だよ。樹のゾーンとほぼ同じくらいある」
「私、こんなに大きい湖はじめて見たかもしれません」
「そうなのか? もっと大きいのはいくらでもあるけど」
「反対側が遠い……」


茅野は淡々と真顔で言うだけだが、生まれてはじめて見た景色に感動しているのだろうということは、十分に伝わる。
ラビは小さく笑った。

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