Z 0 0 Ⅱ

得意気にこくこくと頷く二人を見て、茅野は「あ、」と声を上げた。


「あの……失礼ですけど、どっちがどっちで」
「……さあ?」
「え?」


さらりと返ってきた曖昧な返答に、茅野は思わず聞き返した。

ティンキーとクランキーは見れば見るほど瓜二つで、ほくろの位置さえもほとんど一緒だった。
髪型も髪の長さもわざと同じにしてあるようだし、言われなければ四六時中動き回っていそうだし、これでは見分けなどつきそうもない。


「いつも二人でいるから、呼ぶ時はセットで呼んでくれれば問題ない」
「え、でも、用事がある時とか……」
「それは、ほら……クランキー」
「はあい」


二人はそれまでラビの大きな手のひらを頭に乗せたまま、言われた通りに黙ってラビと茅野の会話を聞いていた。
ラビが呼ぶと、左手の下にいた方が、返事をしてゆるゆると手を振る。


「呼べばいいだろ」
「いいだろー?」
「それは……そうですけど」


双子の兄弟と間違われたりしたら嫌ではないのだろうか。
だが張本人である二人は、ラビの手に自分の手を重ねたりして遊んでいて、全く気にしている様子はない。


「ラビさんも見分けがつかないんですか?」


そう尋ねると、ラビは心底から不思議そうな表情を返してきた。
どうしてそんなことを聞くんだ、とでも言いたげに、答える。


「見分ける必要がどこにあるんだ?」
「え。それは……」
「別にいいだろ、わからなくて。こいつらは二人で二人なんだ」
「なんだ」
「なんだよー」
「えー……?」


当然のことを言うような顔でよくわからないことを言われて、茅野は混乱しかける頭をがしがしと掻いた。

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