Z 0 0 Ⅱ

「すごい、南国の海みたいです……あ、水温が高いから」
「そー。あの河口に、三角形の小島がある。そこで川が二分されて湖に流れ込んでんだ。それのせいか、湖底の地形のせいなのか……俺にはよくわかんないけど、変な水流ができて、左右で合流しなくなっちまったらしい。それで水温差ができたんだと。その温度差で変形しないように、ボートが頑丈に造られてるんだよ」
「へええ……どうしてこんなに温度差ができるんですか?」
「そりゃ、樹のゾーンと熱帯のゾーンでは、気温も地面の温度も違うからな」
「ん?」


茅野は首を傾げる。
ラビの説明が足りないせいだとは思うが、なにがなんだか余計にまったくわからなくなってしまった。
湖の対岸で気温が違うなんて、どういう原理なのだろうか。

考えてはみるが、なにしろここは茅野の常識の通じる世界ではない。
ドラゴンもいるし、鳥はメールボックスだし、ネズミの耳と尻尾の生えた人間もいるのだ。
すぐに自分で考えることは放棄して、とにかく目の前の状況を飲み込むことだけに努めることにした。

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