ふたりの部屋
開け放たれたクローゼット。
部屋の隅に積まれた段ボール箱。
家具などの配置はそのままだが、中身が入っていないことを彼女は知っているようだった。
「引っ越すんだね、二人の部屋に」
何も言わない頬に掌を当てて見つめ合う、切ない目と目。
「もう終わりにしよ?」
窓からの風に揺れた長い髪を押さえ、彼女は精一杯の微笑みを見せた。
「今までありがとう…お幸せにね」
背を向けた彼女は俯き、散乱した服を身につけ、部屋を後にした。
押し殺したような泣き声の後で、ゆっくりとドアが閉まる。
吐き出される、重苦しいため息。