ふたりの部屋
カチカチと僕の真向かいに座る女性の前で、コーヒーカップが音を立てた。
小刻みに震える指に光る真新しい銀色の指輪。
「まあ、こういうわけなんですよ…」
溜め息混じりに言うと、相手はものすごい形相で僕を睨みつけた。
「いやだなあ、奥さん」
僕の笑い声が、パサパサに乾いて床に落ちた。
「僕も被害者なんですよ?」
再生の終わった動画は開始時点に戻り、裸の男の胸に手をついた彼女を映し出していた。
その半開きの唇から聞こえた声が蘇り、僕は醜く歪む顔を男の妻に向けて言った。
「あなたのダンナに乗っかってるのは、僕の彼女なんですから」