【完】彼を振り向かせる方法
「なんでかは……わからないんだ。映画観てて、私苦手なやつだし、ところどころ目つむってて……。
そしたらその間に、ジュース残していなくなっちゃってたの。全く、ほーんとひどいよねぇ先輩」
なんとなくシリアスな場にしたくなくて、クスッと笑って見せる。
そうでもしないと……。
だって、本当はすごく悲しかったから。
「それで……先輩に連絡は?」
「うん、したよ。電話」
「なんだって?」
「……聞け、なかった」
あぁ……どうしよ。
声が震えて、うまく言葉が繋げない。
おまけに鼻の奥もツンとして、指先からも針が刺さったみたいに電流が走る。
思い出すだけでこんなことで……泣いたり、したくない。
でもね本当は、今頃先輩とアイスクリームなんかを歩き食べしながら、
映画のことで盛り上がってるはずだった。
帰りは夕焼けを見ながら二人で、帰るはずだった。
今日は最高の一日になるはず……だったのに。