【完】彼を振り向かせる方法
なんか普通に楽しんじゃってるな、私。
さっきまで根暗モードだった自分はどこにいったんだろう。
他愛のない話で盛り上がりながら、こっそりそんなことを思い伏せてみる。
兄弟の話からコロコロ話題が変わるたび、夕日もゆっくりと沈んでいって、気づけばもう……
「うぉ、暗っ」
「ほんとだ、もう6時過ぎ……」
時間の経過の早さに驚きながらも、ベンチから立ち上がる私たち。
デートしていたのが、遠い昔の如く感じられる。
「暗くなっちゃったし、送るよ」
「へっ⁉︎い、いいよそんな!迷惑かけっぱなしなのにまた……イッ」
ほんのちょっと足を動かしたそのとき、右足からヒリヒリとした刺激を受けて、思わず声をあげる。
「どうした、平気?……ってもしかして、さっきの靴擦れ?」
痛さに眉をひそめる私の顔を覗き込んでくるカケちゃん。
「ごめんごめんっ、だいじょぶだから、行こう?」
そう言って唇を噛み締めながら歩き出そうとする私の腕を
「待った」
彼は掴んで、引き止めた。