【完】彼を振り向かせる方法
そんな弱音を吐いてみても、誰が返事をしてくれるはずもなく……。
後ろにある木の葉が風に撫でられる音が、余計に私の恐怖心を掻き立てる。
寒気もしてきて、訳もなく鳥肌も立ってしまう。
さっきまであんなに楽しく過ごしていた空間が、カケちゃんがいなくなるだけでこんなに……違うんだ。
そういえば、今日観た映画でもたしか……公園でのシーン、あったよね……?
ヒュー……。
「ひぃっ……!」
耳を掠める風の音が妙に不気味で、肩をすくめる。
どうして、今になってあのホラー映画のこと思い出しちゃうのよ……。
考えないようにすればするほど蘇る。
ついには頭の中で、時計台のそばに髪の長い女の霊を立ててしまった。
ブルルッ……。
背筋がピンと張るような悪寒がして、両手で肩をおさえる。
「怖いよ……カケちゃん……」
空気に消え入りそうな声でそう呟いた瞬間だった。
肩にのせらた私の手にかさばる、他の人の手の感触がして、思わず体を硬直させた。