【完】彼を振り向かせる方法
「おまたせっ」
「……カ、ケちゃん……?」
彼の声を聞いても恐怖の中にいた私は、まだ半信半疑の思いで後ろを振り向いた。
「ん?どーした?顔固まってんぞ」
カケちゃんはそう言って、ベンチに座る私の前に回り込んで
視線を合わせるようにしゃがんだ。
「ちょっと寒くね?……ごめんな、待たせちゃって」
「……」
「あ、そうそう今これ買ってきたから……ヒロチー……?」
ビニール袋の中に手を入れてカサカサと音を立てるカケちゃんの服の袖口を掴んで、目頭をあてた。
「こわかった……」
「……ヒロチー……」
ズズッと鼻をすする私の頭に、大きなての感触。
あんなに怖かったのに、こうやってまたカケちゃんの手がぬくもりをくれるんだ。