【完】彼を振り向かせる方法
「ヒロチー、くすぐったい」
「……ごめん」
知らぬ間に、クンクンと鼻を動かしていたようで……。
「これは以上はさすがに……歯止めきかなくなるか……」
「ん?なんか言った?」
「なんでもなーい。とりあえず……あと10秒だけ、じっとしといて」
「うん……」
なんだか、よくわからない。
カケちゃんが一人でにつぶやいた言葉の意味も、
いまこの瞬間、後ろ首を抑える手の強さがましたわけも、
私がこの状況にあんまり……いやむしろ、全く抵抗がないってことも。
それに今は……彼氏のこと、先輩のこと、考えたくないって思ってる。
そして私たち以外誰もいない、街灯だけが頼りのこの空間に吹くそよ風が、
余計に鼓動を加速させる。
まるで、二人だけの世界に閉め出されてるみたいに感じるから。