【完】彼を振り向かせる方法
落ち着いたとか、心地よかったとか、ドキドキしたとか……
そんなことは言っちゃいけないような気がして。
本当は、こうゆう状況って私、嫌がらなきゃいけなかったんじゃないかって思えてきて。
いつも不機嫌な先輩の顔を消したのにも、なにか罪悪感が湧いてきて。
あぁ……ダメだダメだ。
考えれば考えるほどわからない。
方程式なんかより、ずっと難しいよ……。
「俺は別に……寒くなかったけど」
「……え?」
カケちゃんの言葉でまた我に返る。
「ヒロチーが……んと……」
「カケちゃん?」
「……うん、俺もよくわかんねぇわ」
彼は何か言葉を飲み込んだ後、ハハッと小さく笑って自分の髪の毛をくしゃっと触った。
そんな仕草に、おさまっていた胸の鼓動がまた暴れだす。
慣れてないから。
慣れてないからだ、たぶん、きっと。