【完】彼を振り向かせる方法
それを合図にして、カケちゃんは「よっこいそ」と立ち上がる。
そっか……ずっと私と目線合わせるために、しゃがんでてくれてたんだ。
「ヒロチー、立てる?」
「あ、うん!」
カケちゃんの声で我に返り、私もサンダルをしっかりとはきなおして立ち上がった。
ヒールのある靴を履いてるのに、私の頭はカケちゃんの肩をやっと越せているくらい。
そんな些細なことに"男の人"という事実を意識してしまう。
同い年なのに、全然違う。
女と男の差。
もちろん、歩幅だって大きな差があるはずなのに、
私のペースに合わせて歩いてくれている。
怪我をしているせいでいつもより遅いのに、急かすような素振りも一切見せないで。
「ねぇ……カケちゃん」
繁華街を歩く中で、小さく彼の名前を呼んだ。