【完】彼を振り向かせる方法
目線の先……いや、むしろ超目前にカケちゃんの顔がある。
脈のペースが、アクセルを踏んだように一気に加速し出す瞬間。
「俺が当ててもいい?」
手首を掴んだまま、グイッと私に顔を近づける。
な……なんだよこの状況はぁ!!
「あ、当てるなんてそんな……」
「『好きな子に誤解されるよ』」
「……え?」
恥ずかしくて逸らしていた目線を、思わず持ち上げた。
だって、本当に……
「マジで当たってたっしょ。俺、天才?」
冗談なんて全く入ってこない私のおつむ。
少し先の方から流れる改札のアナウンスも、
夏の風物詩である虫の鳴き声も、
一瞬、なにも聞こえなくなった。