【完】彼を振り向かせる方法
それに……先輩のことなんて、私ずっと忘れてた。
合宿に来てから、なにも考えてなかった。
ちょっと前までは、雛水先輩が私の頭の中を独占していたのに。
「いるよ、他校の先輩」
私が控えめに笑うと、周りの子達は「いいなぁ」と声を漏らす。
いいの……かな。
「どうなの、ラブラブ?デートは行った?」
デート……そっか、あの日からだ。
カケちゃんを変に意識するようになって、彼を見るだけで、目が合うだけで、
胸の鼓動が抑えられなくなった。
「まぁまぁ、かな」
「えー、じゃあさぁ、今ここで電話とかしちゃおうよ!」
「え?」
恐ろしい提案をしたクミちゃんが、ほふく前進を模して私のもとへ寄ってきた。
「ほれ、電話しよーぜっ」
「彼氏さんビックリたまげるよきっと!合宿だって知ってるんでしょ?」
「いやでも……」
「はい!かけるったらかける!コールラバー!」
押しの弱い私に、断ることは無理な様子。
ましてや、この女子6人を断るなんて。